2017年03月20日

Kiniro Mosaic(英語版「きんいろモザイク」)Vol.1

「きんいろモザイク」の英語版が発売中です。



一応洋書ということになりますが、電子書籍版もあるので日本からも手軽に購入できます。


英語で学ぶ日本文化

「きんいろモザイク」は、イギリスからの留学生・アリスと、金髪大好きな日本人の女の子・シノたちの日常を描いた4コマ漫画。アニメ化もされている人気作なのでいまさら説明は不要かもしれませんね。

アリスが日本大好きという設定上、日本文化に関する言及がたびたびあるのが特徴です。英語版では、そのあたりを英訳するにあたって様々な工夫が凝らされています。日本語版に忠実なこともあれば、英語的な表現に大胆に置き換えていることもあります。日本語そのままの箇所と英語的にアレンジされた箇所の境界線を探ってみると面白いと思います。

巻末に日本文化に関する解説ページがあるのもポイントです。10ページほどのかなりしっかりした内容。ここでは、外国人にはわかりづらい可能性のある描写に関して、英語で簡単な説明が入っています。また、翻訳の都合上漫画本編で改変した部分について、本来の内容を補足説明している場合もあります。

総じて、「日本を英語で紹介する」という観点からは非常にレベルの高い出来に仕上がっています。特に通訳案内士などを目指している人には絶好の参考書になりうるポテンシャルを秘めていると思います。


以下では、翻訳的に面白い箇所をいくつか紹介します。


どら焼き

まずは、漫画本編最初のページ。イギリスからやって来たアリスは、おみやげとしてなぜか日本の「どら焼き」をさし出します。

アリス「空港で買ったどら焼きです」

この台詞は英語版だと……

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Alice: It's Red-bean pancakes I bought at the airport.
(アリス:空港で買った小豆のパンケーキです)

「どら焼き」という言葉を直接使わなくなり、その特徴を英語で簡単に表現した内容に変更となりました。海外の人は「どら焼き」を知らないかもしれない、という配慮の結果と思われます。

このような改変があった場合は、巻末の解説ページで本来の内容をフォローしています。

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Dorayaki is a pancake snack with red-bean paste inside.
(どら焼きは、中に小豆のペーストが入ったパンケーキ菓子です)

Gift-giving is a pervasive custom in Japan (when you move into a new home, when you come back from a trip, when you visit somewhere, etc.) and considered proper manners.
(引っ越しの時、旅から帰った時、どこかに訪問する時などに、贈り物をするのは日本では一般的な習慣です。礼儀正しい行為と考えられています)

日本語版の内容を紹介するだけでなく、その背景にある文化的意義まで解説。英語による日本紹介として非常にレベルが高いです。


こけし

アリスに忍の容姿を一言で説明させると、「こけしに似ている」となるようです。

アリス「この人形にそっくりなんです」

この台詞は英語版でもほぼそのままの意味です。

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Alice: She looks just like this doll!

日本人なら絵でこけしとわかりますが、外国人には伝わらない可能性がありそうです。このような場合も、巻末で解説が入っています。

The kokeshi doll is a traditional wooden doll with no arms or legs.
(こけし人形は、日本の伝統的な木製の人形で、手と足がないのが特徴です)

このように日本文化を簡潔かつ的確な英文で紹介しており、とても参考になります。


はじめてのおつかい

伝統文化というほどではないにせよ、日本人でないとわかりづいらいネタというものもいくつかあります。英語版ではそのあたりも巻末で補足入りです。

例えば、アリスがスーパーに買い物に行くエピソード。日本語版では、その様子は「アリスのはじめてのおつかい」と形容されていました。英語版でも、ほぼそのままの意味で訳されています。

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"Alice's first errand"

巻末には、これが有名TV番組であることの解説が入っています。

Hajimete no Otsukai ("My First Errand") is a television show in which small children are sent out on their first errand "alone" (to deliver something, buy something, etc.), while they're actually being filmed and looked after by the show's staff.

(「はじめてのおつかい」は、小さい子供が初めて1人でお使い(届け物、買い物など)に行くTV番組です。ただし、実際には撮影スタッフに見守られています)

A child's first time going out alone on an errand is considered a big milestone.
(子供が1人でお使いに行けるようになることは、大事な記念と考えられているのです)




上記のエピソードで、無事(?)スーパーでのおつかいを達成したアリス。次のミッションとして、陽子が提案した買い物は……

陽子「株!」
アリス「株……?」

陽子が言っているのは、投資とかに使われる株のこと。対してアリスが言っているのは、野菜のかぶのことです。アリスがまだ日本語を勉強中だということを伺わせる1シーンです。

ここは英語版では……

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Youko: Stocks!
(陽子:株!)

Alice: Stalks...?
(アリス:茎……?)

stockは投資用の株の意味。読み方はストック。対してアリスの言ったstalkは、植物の「茎」の意味を表します。読み方はストーク。きちんと英語の音に合わせたダジャレになっています。アリスが株の茎のあたりを持っているので、絵的にも問題なし。とても上手く訳されていると思います。


百合台詞を英語で

ここからは、百合台詞が英語版でどのように訳されているかを見ていきます。

まずは序盤。アリスが忍に、自分のことをどう思っているか聞くシーン。

アリス「シノはわたしのことどう思ってるの!?」
シノ「どうって…… これってまさか告白?」

英語版では、以下のようになっています。

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Alice: How do you feel about me!?
Shino: How do I...? Is this a confession of love?

confessionだけでも「告白」という意味がありますが、of loveとつけることで「愛の告白」の意味に限定しています。微妙に百合度アップ?



1巻の後半では、アリスに続くもう1人の金髪美少女・カレンが登場。金髪フェチである忍はカレンのことも好きになり、カレンも忍を気に入ります。アリスは、ライバル(?)の登場に危機感を抱くことに。

カレン「皆優しくて好きだケド、シノは特別な感じするデス」
忍「えー テレますねぇ」

英語版では以下のようになっています。

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Karen: Everyone so nice, I love you all. But Shino feel special!
Shino: Aww, You're making me blush!

基本的には日本語版そのままの意味。ただし、カレンの台詞は英文法的に少し間違っています。例えばEveryoneの後にbe動詞のisが抜けています。また、Shinoの後のfeelはsをつけてfeelsにするべきです(いわゆる三人称単数現在)。このあたりは、カレンがカタコトの日本語しか喋れないという設定を英語で表現しているものと思われます。

ちなみに忍の台詞に出てくるblushは、「顔を赤くする」という意味。ここでは「照れる」という意味で使われています。



「きんいろモザイク」で百合といえば、やっぱり綾と陽子。綾の陽子への恋心は、第1巻の頃から結構はっきりと描かれています。陽子の天然女たらし的言動に、綾が過剰にドギマギしてしまうのがお約束。陽子がラブレターをもらうエピソードあたりが特にみどころでしょうか。

陽子「相手が誰であっても綾の方が好きだからさ!」

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Youko: 'Cos no matter who wrote this, I love you more!
(陽子:これを書いたのが誰であっても、綾のほうが好きだからさ!)

「誰であっても」が「(ラブレターを)書いたのが誰であっても」と補足されている以外は、日本語版と同様の内容ですね。

あと、なにげにI love youとか言ってます。でも英語の感覚ではloveは家族や友人にも使うので、(少なくとも陽子としては)恋愛の意味はないのかもしれません。



そんな感じの、Kiniro Mosaic(英語版「きんいろモザイク」) Vol. 1。

本来の面白さはそのままに、上手く英語に翻訳されていると思います。日本的なものをいかに英語化するか、という観点からも非常に興味深い内容です。英語の勉強用としてのポテンシャルは非常に高いです。

4コマ漫画という形態も、実は英語学習にかなり有効だと思います。4つのコマごとに話に一応の区切りがついているので、流れが理解しやすいです。1つ1つの台詞の役割もつかみやすいです。これは語学学習では重要なことだと思います。

日本語版のファンはもちろん、英語を勉強している人にも非常におすすめできる1冊です。


ちなみに、アニメはともかく原作漫画の英語版が出るようになったのは結構最近です。Vol.1が2016年12月発売でした。続いて2017年3月21日には、Vol.2が発売されます。

電子版もあるので、気になっている方はぜひ読んでみてください。電子版の方が価格も安いので、個人的にはやはりこちらがおすすめです。

posted by trinder at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする