2012年09月19日

茜色コンフィチュール(黒霧操)

黒霧操さんの「茜色コンフィチュール」を読みました。



百合姫の2012年1月〜9月号に掲載された読み切りと描き下ろし1本を収録した短編集です。

金色(ヴィーナス)のカノジョ

何でもできる美人の転校生・美留に密かに憧れる、不器用で純朴な少女・のぞみ。クラスの人気者である美留とは住む世界が違うと思っていたのぞみですが、ひょんなことから話をする機会を得て、少しずつ仲良くなっていきます。

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内気な少女の内面を、天体になぞらえながら丁寧に綴った作品です。最後にのぞみは勇気を出してちょっと思い切った行動に出ていますが、その結果は読者の想像に任せられています。


零れ桜

収録作品で唯一現代以外を舞台にした、大正時代ものです。お嬢様のさゆりに仕える、女中のマチ。年の近い2人は幼い頃から遊び相手でもあり、今でも2人は強い絆で結ばれています。しかしさゆりのもとには親の決めた縁談が舞い込み、マチは複雑な想いにとらわれます。

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親の決めた結婚で女の子達の絆が引き裂かれるのは、大正ものとしては「花物語」からのお約束なのでしょうか。とはいえ、自暴自棄になったりせずに前向きに生きる2人の姿からは、ただ運命を悲観するだけではない強さを感じます。さゆりの結婚相手も決して悪い人ではなく、男が単なるわかりやすい悪役としては描かれていないことも、ある種の現実味を作品に与えています。


in the closet…

幼馴染のリカに密かに好意を寄せる奈緒は、リカにそっくりな人形を自分のクローゼットの中に隠して愛でていました。そんなある日、リカは急に髪の色を変えたりするようになり、奈緒は人形を見られたのが原因ではないかと疑いだすのですが・・・。

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想い人の人形を作って可愛がるという主人公のちょっと異常な行動が重い展開を予感させますが、実際は拍子抜けするほどにお馬鹿で明るい作風です。根底に暗い衝動がありつつも、表面的には終始明るくストーリーが進むというのは作者の黒霧操さんの作品に共通する傾向かもしれません。


シガレット≠チョコレイト

好きな人ができたことを嬉々としてルームメイトの茅に報告する、恋多き女・真美。しかも真美が今回好きになった相手は女の子でした。茅はそんな真美を淡々と見守り、その後真実が失恋した際にはなぐさめてもあげるのですが、実は茅は密かに真実のことを想っていました。

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主人公が社会人で大人なためか終始冷静で、真美に対する恋心も最後まで秘めたままです。今のところ想いを打ち明ける気はないようですが、いつか勇気を出す日が来るんでしょうか・・・?


溺れる金魚

地味めでおとなしい望子(もこ)は、年相応に派手で自分とは違うタイプに見える梨沙と、なぜかいつも一緒にいたくなってしまいます。時に望子に冷たい態度を取っているようにすら見える梨沙から離れられない理由を、望子はいつも自問自答しています。

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梨沙とだんだん親しくなっていく展開・・・と思わせて実際そうなのですが、望子はそれをかえって物足りなく感じ、結局また冷たくされるように振舞っています。冷たく見下されるのが心地よい・・・というちょっと歪んだ片思いのようです。これもまた、特別なことは何も起こらない日常の中にさりげなく潜んでいる異常な感情といえるかもしれません。



茜色プロムナード


単行本での描き下ろしで、「シガレット≠チョコレイト」の続編。茅がキャバクラ(らしき店)でバイトを始めたことをきっかけに、真美との関係にちょっとした変化が現われます。

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真美がさりげなく茅に言う「好き」という言葉に恋愛的な意味はないように見えますが、それでも茅は真美から離れられないようです。このままの距離感がお互いにとって居心地が良いのか、それともいつか一歩を踏み出す日が来るのか、これ自体後日談ながらもさらに先が知りたくなる作品でした。


というわけで、黒霧操さんの2冊目の百合姫コミックス「茜色コンフィチュール」でした。

どの作品も少女漫画チックな非常に可愛らしい絵柄で、思春期の女の子たちの揺れ動く気持ちを活き活きと描いています。特に「金色(ヴィーナス)のカノジョ」あたりは特に暗い要素もなく、純粋に青春漫画として面白いです。

一方でちょっとだけ異常で暗い衝動が描かれていることも多く、「in the closet…」で幼馴染の人形を作る主人公や、「溺れる金魚」のわざと冷たくされるように振舞う女の子からは、想い人への歪んだ愛情が感じられます。とはいえそれらの感情はあくまで内面に留まっており、衝動が爆発してショッキングな出来事を起こしたりすることもないため、少女らしい不安定さを現実味を損なわずに表現するエッセンスとして上手く機能しているのではないでしょうか。

ちょっとだけ苦さや痛みがある作品が好みだけど、暗い話やショッキングなシーンは見たくない・・・という人におすすめです。

茜色コンフィチュール (百合姫コミックス)





posted by trinder at 12:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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