2013年03月19日

少女惑星 (柏原麻実)

柏原麻実さんの「少女惑星」を読みました。

少女惑星 (百合姫コミックス)

元は百合姫で連載されていたオムニバスで、1話ごとに主人公を変えながら少女達の様々な恋を描いています。収録されている4つのエピソードはそれぞれ夏・秋・冬・春と季節順になっています。

episode1. 花火が消えないうちに


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幼馴染で大の仲良しのみどりと夏海。みどりは、夏海が最近すっかり女の子らしくなって男子からも人気があることを内心複雑に思っています。このままでは夏海が自分から離れて言ってしまうのではないかという不安にかられたみどりは、様々な感情が交錯して、夏海を一方的に突き放すような態度を取ってしまいます。

いわゆる幼馴染ものです。いつか来るかもしれない幼馴染との別れに怯えるみどりの姿が印象的ですが、暗くなりすぎることなく、少女達の揺れる感情が活き活きと描かれています。これまで毎年一緒に見たという花火が、2人の絆の象徴として効果的に使われており、爽やかな後味を与えてくれます。

ちなみに高津さんというキャラがみどりに妙にきつい態度を取っていますが、実は良い人だったなんてオチもなく、このエピソードを見る限りはただの嫌な子です。

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が、episode.3にてメインキャラとして再登場し、キャラクターが掘り下げられています。


episode.2 白線

何でもできて女の子からも大人気、まさに王子様といったイメージの律花が主人公。しかし律花は一見地味で不釣り合いにも見える女の子・千晴を気に入っており、そこだけは周囲からちょっと不思議に思われていました。

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実は律花は軽い気持ちでキャーキャー言ってくるだけの上辺だけの女の子たちに内心失望しており、自分だけを本当の意味で「好き」になってくれる相手を探していたのです。一見地味で大人しく見える千晴と仲良くなることで、その願いは叶えられたかのように見えましたが・・・ある日千晴が男子から告白を受けたことから、律花の目論みは狂い始めます。

中世的な魅力で大人気な典型的な女子高のアイドルに見えて、実は暗い孤独を抱える律花のキャラクターが印象的。王子様系キャラは百合ものでは珍しくありませんが、その内面をギャグではなくあくまで真面目に描いた作品は比較的珍しいのではないでしょうか。

最後の展開も自業自得とはいえあまり救いのないものです。必ずしも想い人と結ばれない点はepisode.4と同じですが、同時に明るい希望に溢れているあちらと違い、このエピソードはそういった救済もありません。今後どうなるかは、律花が自分の気持ちと正面から向き合うことができるか次第でしょうか。


episode.3 火の女王様と嘆きの下女

引っ込み思案で大人しいちかという女の子が主人公で、ヒロインはなんとepisode1に出てきたイヤな奴・高津さん。下の名前は公子だったようです。

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ちかとは幼馴染で、まるでタイプが違うように見えますがちかはいつも公子の後ろにくっつています。

いつも何かに腹を立てており他人の幸せを壊さずにはいられない公子。ですが実際にはその心は不器用さと孤独に満ちており、心のどこかでちかによる救いを求めていたようです。

ところで、実は私は連載時は別の話が一回挟まったのもあってepisode1との関係性をあまりよく理解しないまま読んでいました。ですが改めて読んでみるとepisode1と3は何度かキャラクターの相互出演があって、高津の他にもちかもepisode1に出ていたり、episode3にはみどりと夏海が出ていたりします。

episode.4 少女惑星

木蓮というちょっと変わった名前のとにかく元気で明るい女の子は、同じ部の由美浜先輩のことが大好き。この出会いはきっと運命と信じて猛アタックをかける木蓮でしたが、ある時、由美浜先輩が土井部長とキスしているところを目撃してしまいます。

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主人公の前半の過剰なほどの明るさと元気さと、後半の切ない展開の差が鮮烈な作品です。舞台が映像写真部(映研+写真部みたいなものらしい)ということで、写真やカメラといった小道具もシチュエーションの盛り上げに一役買っています。

主人公から見れば失恋ものということになるのかもしれませんが、最後は自分の気持ちに折り合いをつけ、明るく由美浜先輩たちを祝福しています。オムニバスの最後を飾るにふさわしい、切なくも希望に満ちたお話です。

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タイトルにもなっている「惑星」のイメージに乗せて、少女達それぞれの恋模様が綺麗に締めくくられています。


全部で4つのエピソードが収録されているこの「少女惑星」。一応短編集といえると思いますが、一話あたり30〜40ページほどあるので駆け足な感じはなく、少女たちの心の揺れ動きが丁寧に描かれています。それぞれ普遍的で共感しやすいテーマを持ちつつも、個性的なキャラクターと活き活きとした心理描写によって独自の魅力を持った作品に仕上がっているのではないでしょうか。

表紙裏や巻末に作者の柏原麻実さんのコメントがあり、念願の「百合コミックス」が出せたことの喜びが語られています。「まだまだ稚拙」などと謙遜なさっていますが、柏原さんは「百合天国」という古い百合アンソロジーや今は亡き百合姫S、百合姫本誌などで百合漫画を描いており、百合と縁のある漫画家さんです。今後も機会があったらまた百合作品を描いてほしいです。

巻末のあとがきページは収録されている各作品に少しずつイラスト&コメントがされているのもみどころ。

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episode1について「実体験入ってるかも」と語っているのが非常に気になります。

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柏原 麻実

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アニメメイト特典はみどりと夏海のイラストカード。
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posted by trinder at 14:50 | Comment(1) | TrackBack(0) | コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
少女惑星は涙のバーゲンセールって印象だったなぁ…主人公達が必ず泣くので、あぁまたか…と食傷気味になってしまうのが惜しかった
『百合天国』の2巻でも…
Posted by 史進 at 2016年07月27日 02:20
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