2016年07月30日

Whispered Words(英語版「ささめきこと」)をいっき読み

今回は、名作「ささめきこと」の英語版「Whispered Words」を紹介します。



日本の百合漫画が英語化されること自体は最近では珍しくありませんが、電子書籍化されているのはまだまだ少ないです。この作品はその貴重な例です。しかも、現在セールにより各巻450円になっています。英語版は1巻あたりに日本語版の3冊分の内容が入っているのでかなりお得です。


   

1巻の内容は以前に軽く紹介したことがありましたが、今回は最初から最後までの名場面をいっきに振り返ってみます。




ヒロインの風間汐(かざま うしお)は、女の子のことが好きな女の子。

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Ushio: What's so wrong with two girls falling in love, anyway?
汐:……どうして女の子同士で愛し合っちゃいけないのかしら

主人公の村雨純夏(むらさめ すみか)は、そんな汐の親友。いつも汐の暴走をたしなめたり、汐がフラれたら慰めたりしています。しかし、実は純夏は密かに汐に想いを寄せていました。しかしそれを言い出す勇気はなくて…というのが物語の基本的な構図です。

Sumika: My love is a solitary flower. One that will never blossom...
純夏:私の恋は孤島の花。咲いて実りのあるじゃなし



汐は純夏の気持ちなど知らずいつも自由奔放です。急にキスの練習がしたいと言いだしたりも。練習と称して純夏にお面をかぶせてキスをするシーンは当時話題になりました。

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Sumika: My first kiss with the person I love that I've always dreamed of (minus the mask). It tasted hard plastic.
純夏:夢にまで見た大好きな彼女とのファーストキス(もどき)は冷たいプラスティックの味──


でも実は、汐も純夏をたとえ無意識にせよ親友以上の存在だと思っているようです。夏休みに純夏が帰省してしばらく会えなくなったときは、汐は何とも言いようのない不安と寂しさに襲われていました。

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Usiho: I want to hear her voice...
汐:…声が聞きたいな

このエピソードはアニメ版では最終回として扱われています。


このあたりで物語は1つのピークになっていたと思うのですが、この後しばらく2人の関係は足踏み状態。これといったドラマのない日常シーンが続き、当時の読者はこのあたりで若干マンネリを感じ始めたかもしれません。

一応、留学生のロッテに汐が夢中になる話は百合といえば百合なんでしょうか。

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Ushi: I saw... an angel. I wonder if she was a transfer student? she had golden blonde hair! And her big, beautiful blue eyes were like a dolls! So adorable!
汐:私、天使を見たの。留学生かしら、ふわっふわの金髪でね!つぶらに輝く透き通った青い瞳が人形のように愛くるしいったら!

ただ、日常シーンが多いのは英会話の勉強としてはむしろ長所になり得ます。このへんの中盤の展開は英語化したことで別の価値が出てきたと言えるかもしれません。



中盤はほぼずっとそんな感じですが、汐と純夏の過去を描いたエピソードはなかなかの見どころです。2人がいかにして親友になったか、そして純夏がいつ汐への恋心を自覚したか等が丁寧に描かれています。ここだけを親友ものの短編として見てもかなり面白い出来だと思います。


かつて汐は「レズ」としていじめに遭っており、クラスでも浮いた存在でした。汐自身も、それを仕方ないこととして受け入れてしまっている日々。しかし、正義感の強い純夏との出会いによって汐に転機が訪れます。

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Sumika: But that's partly because you won't get angry! So I get mad in stead. I mean, there they are insulting my friend!
純夏:だってあんた怒んないんだもん。私は怒ったよ。私の友達が侮辱されてるんだ)

Sumika: But you not getting upset makes me feel silly for getting so heated.
純夏:これであんたが平然としてたらバカみたいじゃん。私一人でさ

Ushio: By friend, you mean...?
汐:あの、友だちって…

Sumika: Well, yeah... That's what I thought we were... was I wrong?
純夏:あ、いや。私はそうだと思ってたけど……違うの?



純夏のおかげで汐はありのままの自分に自信を持つことができ、堂々と振舞うようになります。結果としてクラスでも受け入れられていきます。

そしてあるとき純夏は、汐のことが好きになっている自分に気づきます。しかし、汐の好みは「かわいい」女の子。純夏は自分をそういうタイプとはほど遠いと思っており、汐への気持ちは心の中だけにしまっておこうと決心します。

Sumika: Kazama, you really do like cute girls, don't you?
純夏:風間はさ、本当にかわいい女の子が好きだよね

Ushio: Heh heh. I always get so excited. I don't know why, but yeah, I do!
汐:えへへ、いつもお騒がせしちゃって。なんでかしらねえ。自分でもよくわからないんだけど

Ushio: Just looking at them makes me feel happy. It's fun!
汐:見ているだけで幸せになるっていうか、楽しくなれるっていうかさ

Ushio: Every one has something like that, right?
汐:誰にでもあるでしょう?そういうの

You're exactly right. Kazama. I have something like that too. Something I really love...
純夏:(……うん、そうだね風間。私にもあるよ。大好きなもの)

Something that makes me happy just to look at.
純夏:(見ているだけで幸せなんだ、私──)

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こうして純夏は汐を一歩引いた立場で見守るようになり、本編第1話へと繋がっていきます。


回想話が終わると、再び現在の時系列に。作中時間が2年目になって後輩ができ、純夏と汐の関係にも少しずつ変化が現れます。汐は純夏に恋愛感情を抱いていることも次第に明確に描かれていきます。しかし汐は純夏にそっちの気はないと思っており、恋心を打ち明けて良いのか悩むことに。

このあたりの足踏み状態も結構長いです。またしても日常シーンが続きます。空手大会編とか、生徒会選挙篇とか、そんなのいいから本筋を進めてくれと当時の読者は思ったとか思わないとか・・・。


終盤(日本語版でいう8〜9巻)に入る頃には、さすがの純夏と汐もお互いがお互いを好きだということに気付いています。すでに事実上付き合っていると言っても良い状態です。

そして、最終回は卒業式のエピソード。2人きりの教室で、純夏は汐への想いを爆発させます。


Sumika: Today was the last day. The last day of going to school together, of taking class together and eating lunch together, of walking home together.
純夏:今日で最後だったんだ。一緒に登校したり、一緒に授業受けてお弁当食べて、一緒に下校して

Sumika: If I wanted to hold your hand, I could at any time.
純夏:手をつなごうと思えばいつでもつなげた

Sumika: If I wanted to put my arm around your shoulder, I could at any time...
純夏:肩を抱こうと思えばいつだって……

Sumika: But now, you're going far away.
純夏:でも、もう風間は遠くへ行っちゃう

Sumika: Why didn't I do more! Why didn't I hold you and touch you more! I realized it now... too late...
純夏:なんで私もっと……もっと 風間を抱きしめて……触れあっておかなかったんだろうって……今更……

Sumika:I don't want to graduate...
純夏:……卒業なんて、したくないよ……

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Ushio: I also should've realized eariler... that you're such a beautiful girls, Sumi-chan.
汐:私も、もっと早くに気づくんだったな。すみちゃんがこんなにカワイイ女の子だったなんて

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Ushio:I love you, Sumi-chan. I love you so much.
汐:好きよ、すみちゃん。大好き。

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Sumika: I love you. I love you, Kazama!
純夏:好き。大好き。風間、大好き!




Whispered Words(英語版「ささめきこと」)をいっきに振り返ってみました。

百合漫画史に残る名作の1つということで、改めて読み返しても非常に楽しめる作品でした。元々が全9巻(英語版は3冊にまとめられています)ということで、恋愛メインの百合漫画としてはかなりの長編です。そのぶん物語が非常に丁寧に描かれています。

現在英語版はKindleストアで各巻450円のセールになっています。実質9冊分の内容を450円×3で読めるので、英語に興味がある人にはおすすめです。

   


翻訳に関して

基本的には日本語版に忠実に英訳されています。元の日本語に入っていた言葉は一位一句落とさず翻訳しようとしている感じ。

文法にも非常にこだわっている印象です。会話文でもあまり文体を崩したりせず、文法的に正しい書き方になっています。省略もあまりありません。そのため、全体的に長文が多め。ある意味、教科書的な文章と言えるかもしれません。

結果として微妙に印象の異なる台詞になっている箇所もあるので、日本語版と比べながら読むとさらに楽しいと思います。

  
 

ちょっと宣伝

最後にちょっと宣伝。

現在、電子書籍「ゆりたん 百合×英単語。」をKindleストアで販売中です。「ささめきこと」含む百合作品によく出てくる言葉をリサーチし、英単語として収録しています。英語の百合作品を読みたいけど語彙力に自信がない!という人にぜひ読んでほしいです。

 
 


ラベル:電子書籍
posted by trinder at 05:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | コミック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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