2016年10月03日

聖クロス女学院物語(南部くまこ原作、KeGイラスト) / 全3巻がKindleストアで半額セール中

9月30日から10月7日まで行われている、「ニコニコカドカワフェア2016」。カドカワ系の電子書籍が多数半額になるというお得なキャンペーンです。

参考記事:ニコニコカドカワフェアでKindle書籍が多数半額 「あやかしこ」「小百合さんの妹は天使」最新巻も


最近の作品から過去の名作まで、様々な作品がセール対象となっています。その数なんと2万点以上。これまで触れていなかった作品に触れてみるのにも良い機会です。

というわけで今回は、これまで紹介する機会のなかった作品を取り上げてみたいと思います。


聖クロス女学院物語

今回紹介するのは、小説「聖クロス女学院物語」です。南部くまこさん原作、KeGさんイラスト。

  

2014年頃に、児童向け小説として「角川つばさ文庫」からリリースされていました。このレーベルは一応小学生程度が対象とされていますが、カドカワらしくそこはかとなく二次元寄りのイメージ。中高生向けライトノベルを児童向けに作り直したような作品も見受けられます。このレーベルを入り口にして、カドカワ系の二次元コンテンツへステップアップしてもらおうという狙いもあるのでしょう。

そんな環境でリリースされたこの「聖クロス女学院物語」。作風としては、王道女子校もの+ミステリー(あとちょっとだけファンタジー)というイメージです。それほど直接的ではありませんが百合テイストがあり、作者さんの作風からしておそらく狙っているのでしょう。ここから百合に興味を持ち始めた小学生がいるかもしれないと思うと、ある意味おそろしい作品かもしれません……。


あらすじ

カソリック系の女子校「聖クロス女学院物語」の中等部には、「デスティーノ」と呼ばれる伝統があります。1年生に上級生のお姉様から手紙が届き、文通ができるというものです。ただし、自分のお姉様が誰かを知ろうとしてはいけないというのがルール。

主人公の陽奈は、初等部からの持ち上がりで中等部に上がったばかり。幼馴染である奈々とは同じクラスになれたし、お姉様との文通も始まって、新たな生活を楽しんでいます。

そんな陽奈の前に現れたのは、隻眼のミステリアスな美少女・花音(かのん)。容姿と話し方こそ美しいものの、性格はフリーダムでエキセントリック。熱烈なオカルトマニアであり、1年生ながらも「神秘倶楽部」という自分の部活を作ろうとしています。学園内ではすでにかなりの有名人。

花音になぜか気に入られてしまった陽奈は、「神秘倶楽部」へ熱心に(というか強引に)勧誘を受けます。でも陽奈には、幼馴染の奈々と一緒に美術部に入るという約束があって……。



百合的みどころ


デスティーノ

正体を隠したまま文通する「デスティーノ」の設定が非常に魅力的。作中たびたび陽奈のお姉さまのやりとりが挿入されており、お姉さまの正体が誰なのか、陽奈でなくとも気になること間違いなし。

陽奈個人の願望としては、皆の憧れの上級生・史織が自分のお姉さまなら良いなと思っています。本当にそうではないかと思わせる出来事が何度かあるものの、真相は……?

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花音

ヒロインである眼帯の美少女・花音も非常に個性的。毎回突拍子もない言動と無駄な行動力で物語を引っ張ってくれます。「神秘倶楽部」の部長として学園の様々な怪事件に首を突っ込み、陽奈もそれに巻き込まれて……というのが定番のパターンです。

とにかく台詞が面白いキャラで、陽奈とのやりとりは漫才のようです。

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花音「よろしいんですのよ?お姉さまと思っていただいて」
陽奈「同い歳じゃん!」
花音「同い歳じゃだめ?わたしく、あなたのこと気に入りましたわ」

お姉さまという概念を根底から覆す大胆な発想。ただものではありません。



女子校文化や女同士の友情に憧れているという意外な面も。部のあいさつに「ごきげんよう」を推奨するなど妙なこだわりを見せます。陽奈と奈々の友情に対しては、羨望のまなざしを向けていました。

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花音「憧れますわ!松本さん(陽奈)!これぞ女子校!」



当初こそ花音が陽奈を一方的に巻き込む関係だったものの、次第に2人の間には本当の友情が芽生えていきます。1巻の最後では、お互いを名前で呼び合うように。

2巻の冒頭では、花音は自分達のお姉さまの正体をつきとめようと陽奈に持ちかけていました。もちろん、ルール違反です。

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花音いわく「わたくし、陽奈がいっしょなら、ルール違反もやぶさかではございませんことよ……?」



2巻後半である事件が起きる場面では、陽奈の側からの強い友情も伺えます。

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陽奈「わたしは、こんなに、花音に会えてよかったと思ってるのに……」。



3巻後半では、花音が眼帯の下の秘密を陽奈に明かします。それまで葵(花音の幼馴染)にしか見せたことがなかったくらいですので、花音にとって陽奈の存在がとても大きいものになっていることがわかります。

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3巻のクライマックスでは、2人揃って遭難するという展開が。もう完全に花音がヒロインですね。

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花音「夢の中で、ずっと陽奈の声が聞こえていたの」

花音「……こわくない……ですわ……。陽奈が……いっしょですもの……」


いろいろと深読みしたくなる台詞です。この3巻から神秘要素が本格的に話に絡み始めるのもあり、この後のストーリーがとても気になります。しかし……。



奈々

陽奈の幼馴染である奈々にも注目です。幼少時の陽奈とは、「えいえんの友」の証としてメダイを交換したという微笑ましいエピソードがあります。その後陽奈はそのメダイを一時なくしてしまうのですが、必死に探す姿からは強い友情を感じることができました。

ただし、奈々は常に神秘倶楽部にいるわけではないので出番は控えめです。陽奈との友情描写も序盤と回想に集中しています。そのかわり、1巻後半から2巻にかけては奈々ともう1人の幼馴染である時子との絆が描かれることになります。

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ただ、この時子さまというのが大人しい外見に似合わず(むしろ大人しすぎるゆえに?)なかなかの問題人物。陽奈と花音はたびたび巻き込まれることになります。本人に決して悪気はないのですが……。



璃子

璃子は、花音のライバルを自称するキャラクター。といっても実際には花音の幼馴染で、花音にかまってほしくて挑発的な態度を取っているだけのようです。

さらに、幼少時には葵(花音の幼馴染)とケッコンすると言っていたという衝撃の過去もあります。

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花音・葵・璃子の3人にはどうやら複雑な因縁があるようです。



史織さま

史織は、みんなの憧れの生徒会長。陽奈も例外ではなく、史織に強い憧れを抱いています。あの花音ですら熱烈な史織ファンで、むしろ信奉者といってもいい領域です。

陽奈と花音はそれぞれ、史織さまが自分に優しくしてくれたとか、自分のお姉さまは史織さまかもしれないとか、勝手に言い合っています。

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果たして、真相は……???

そして花音の中で、史織と陽奈のどちらが大切なのか。この後どこかで優先順位が変わるとしたら、どんな展開でそうなるのかも気になります。



蜜希さま

生徒会副会長の蜜希は、中性的な魅力で生徒に人気です。本人もそれを意識した立ち居振る舞いをしています。花音いわく、「あの方、ご自分が女の子に人気があるのをご存知なのですわ」。

生徒会長の史織とは相性抜群で、抱き合ったりすると生徒達から黄色い歓声があがります。

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ストーリーの本筋にはあまり絡まないことが多かったのですが、3巻にていくつか気になる点が示唆されます。「演じる」ことが好きだという面が語られたり、奈々に強い憧れを抱かれていることが判明したり。奈々には時子がいるはずなのですが……。この後のストーリーで、なにかひと波乱あるのかもしれません。



「聖クロス女学院物語」1〜3巻のみどころを、百合的な観点から紹介してみました。舞台設定やキャラクターが非常に魅力的な作品であることが少しでも伝わっていたら幸いです。伝統的な女子校の世界観が好きな人、ちょっとした冒険やミステリィが好きな人におすすめです。

現在、カドカワのキャンペーンによって電子書籍版が半額になっています。興味がある方はこの機会に触れてみてはいかがでしょうか。

  
 
3巻合本版も出ており、ほんの少しですがお得です。




未完……?


最後に一応、注意。この作品はまだ完結していません。

2014年の春から秋にかけて全3巻がリリースされたのですが、その後約2年間に渡って音沙汰がありません。3巻目も特に完結させている感じではなく、むしろ新たな展開への伏線(と思われるもの)を張り巡らせていました。

この作品に問題点があるとしたら、3巻の続きが気になって仕方がないこと。そしてそれが実際に読めることがおそらくなさそうなこと、でしょうか……。
 
posted by trinder at 10:17| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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