2017年12月31日

FLOWERSシリーズを振り返る 夏篇

2017年に完結したFLOWERSシリーズを振り返っていきます。前回の「春篇」の記事に続いて、今回は「夏篇」。

夏篇




ファンの多くが気になっていたのは、「FLOWERS」の物語をどのようにつなげるのかということだと思います。「春篇」単体でも(悲劇的とはいえ)物語に1つの区切りがついていたようにも思え、以降どの部分をどのように広げていくのか、期待と少しの不安があったのではないでしょうか。

そんな中でリリースされた「夏篇」は、主人公の変更により「春篇」とはまた違った魅力を持った作品となっていました。

flowers_re2e.jpg

えりか


「春篇」では「車椅子の少女」として登場していた八重垣えりか。「春篇」では印象的な登場をしたものの、後半のストーリーには大きく関わらなかったキャラクターです。主人公としての抜擢は、個人的には正直かなり意外に感じました。

人付き合いの苦手な本好き、という点では蘇芳と共通点を持ちます。しかし他人と仲良くしたい意思自体はある蘇芳と違い、えりかは根本的な人間嫌い。相当にひねくれていると言っても過言ではありません。それゆえ「春篇」では共感しにくい面が目立っていましたが、「夏篇」では彼女の主観視点となったことで、独自の魅力が表れます。

不器用ながらも他人を気遣うキャラクターであることも描かれました。特に、マユリを失って沈んでいる蘇芳に発破をかける姿が印象的です。蘇芳との絆は、次作以降でも物語上重要な意味を持つことになります。


えりか視点となったことで、謎解きのシーンにも変化が表れました。単に真相を解き明かすだけではなく、「真相を知りつつ誤魔化す」「煙に巻く」のが目的のパートも登場しました。えりかのキャラクターとゲーム性が上手く結びついていると思います。

千鳥


「夏篇」のヒロインとなったのは、転入という形で登場する新キャラクター・千鳥。非常にクセのある性格で、転入早々に周囲と険悪な雰囲気を作りかけます。そのあまりの協調性のなさは、自身が人間嫌いのえりかですら心配になってしまうほど。

千鳥とアミティエ(同室)になってしまったえりかは、ときに衝突しつつも次第に距離を縮めていきます。他人と衝突しがちだけど、優しさも併せ持っている。そういう根底の部分では似ているところもあるのでしょう。やがてそれぞれの過去を知り、互いの気持ちを理解したことで、愛し合うようになります。


千鳥が歌・演劇・バレエなどの芸事が得意という設定も、シリーズに新しい風を入れています。クライマックスはバレエのシーンとなっており、前後の展開によって結末は細かく分岐。あえて決別する、再会を誓い合いつつも別れる、いつまでも一緒にいる、なども展開があり、いずれも納得のいく描写のうえでのこと。えりかと千鳥の絆の深さが鍵となっていました。

全体的に見て、えりかと千鳥の2人の物語という印象が非常に強くなっています。前作「春篇」で始まりの物語をひとおり描いており、次作「秋篇」ほど終わりを意識しなくていい。作品のそんな立ち位置が、キャラクターを中心とした自由な物語につながったのかもしれません。

ダリア


脇道ながら、ダリア先生のルートもありました。

ダリアは、足が不自由なえりかを入学以来ずっと介助してくれていた優しい女性。最初は懐かなかったえりかでしたが、現在では強い信頼を抱いています。そしてそれは、やがて愛情へと変わっていきます。

私は初プレイ時にダリアENDに入り驚きました。プロモーション上はヒロインは千鳥1人とされていたというのもあります。

ルートがあること自体は意外ではあるものの、えりかがダリアに恋心を抱く描写は非常に丁寧です。人間不信なえりかが普段からあれほど心を許している相手ですから、その根底に特別な感情が含まれていたのも自然なことなのかもしれません。

ただし、このルートでえりかの恋が成就することはありません。えりか自身もそれをほとんどわかっています。それでも、映画の台詞『人間は、人生を失敗する権利がある』を自分に言い聞かせて一歩を踏み出すえりかの姿が印象的です。人間嫌いの冷めた少女という普段のイメージとはまた違った、情熱に身をゆだねる姿をみることができます。

演出、システム面


新たな物語やキャラクターだけでなく、作品の作りこみという点でも驚かされる一作でした。

「春篇」プレイヤーがまず気付くと思われるのが、BGMがほぼ一新されていること。「春篇」に登場した音楽も、季節やキャラクターを意識した新しいアレンジで登場しています。

ビジュアル面でも確実に進化。立ち絵が夏服に変化しており、新鮮な印象を与えます。以降も「秋編」「冬篇」ではそれぞれ個別の制服が用意されました。1作=1季節、であることをより強くプレイヤーに印象付けていたと思います。一部のシーンでは立ち絵が動く演出もありました。

中価格帯の作品であり、四部作予定という事情からして、流用できる素材は流用するものと予想していた人も多かったのではないでしょうか。1作ごとに新作のような作りこみが見えたのは素晴らしいことだと思います。

PSP版


「春篇」に続き、今回もPC版から半年ほどでPS Vita&PSP移植版が発売されました。私は今回もPSPでプレイ。

flowers_re2f.jpg

なお、PSPでのリリースは今作が最後となりました。以後は移植はPS Vitaのみとなります。少し寂しいですが、時代の流れなので仕方ないですね。

移植の出来は今回も完璧です。スクリーンショット、ボイスコレクションにももちろん対応。

1つ目玉だったのは、初回特典で新作ドラマCDが付いたこと。前作「春篇」の移植版についていたドラマCDはPC版と同じものでした。

ドラマCDのクライマックスでは、ゲーム本編のOP曲である「夏空の光」が蘇芳の作曲という設定で演奏されます。歌うのはえりかと千鳥による二重唱。ゲームの「冬篇」にてこのことと思われる出来事が言及されており、正史に組み込まれていることが伺えます。

秋篇へ


えりかと千鳥の物語、という印象が強い「夏篇」。

ですが最終シナリオは蘇芳視点から描かれ、「FLOWERS」全体としてのつながりを感じさせます。蘇芳は、ニカイアの会の会長である譲葉であれば学園の謎、そしてマユリの行方を知っているのではないかと推論立てます。そして、その譲葉自身が主人公である「秋篇」へと物語は続いていきます。

【PC版】【PS Vita版】【PC/ダウンロード版(DMM)】


【参考記事】
FLOWERS夏篇 プレイ開始
「FLOWERS夏篇」 chapter1 かえるの王様
「FLOWERS夏篇」chapter2 千匹皮
「FLOWERS夏篇」chapter3 髪長姫
「FLOWERS夏篇」chapter4「歌う骨」 chapter5「ホレおばさん」
「FLOWERS夏篇」chapter6「マリアのこども」
PSP版「FLOWERS夏篇」
PS Vita/PSP「FLOWERS夏篇」初回特典ドラマCD「夏空の光」
FLOWERS夏篇ファンブック



ラベル:flowers
posted by trinder at 11:12 | Comment(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。