2018年01月20日

FLOWERSシリーズを振り返る 秋篇&冬篇

昨年リリースされた「冬篇」で完結した百合系ミステリィADV「FLOWERS」シリーズ。少し前から1作ずつ振り返る記事を書いています。

【参考記事】
FLOWERSシリーズを振り返る 春篇
FLOWERSシリーズを振り返る 夏篇

今回は、3作目「秋篇」から。

秋篇





個人の感想としては、非常に特異な存在に感じられる作品です。

まず、主人公である八代譲葉。ニカイアの会の会長であり、蘇芳やえりかから見て先輩にあたります。これまでの主人公とは違った立ち位置からの物言いが多く、少々毛色が異なります。

また譲葉は、公式サイトなどで「エキセントリックで行動的」などと紹介されてきたキャラクターです。思わぬ言動で蘇芳たちを驚かせたり、戸惑わせたりすることも多くありました。考えようによっては、プレイヤーにその胸中を予想させない、把握させないことに1つの個性があったともいえます。

いわば、第三者であることによって魅力が成立しているキャラクターという印象が非常に強かったのです。その譲葉が主人公になるというのは、楽しみでもあり、不安も感じるというのが「秋編」プレイ前の印象でした。


そんな色々な気持ちが入り混じってプレイした「秋篇」。そこでは、譲葉のキャラクターが丁寧に掘り下げられていました。譲葉がこれまで蘇芳たちに見せてきた側面は、作られたものであり、意図して演じたもの。ここまでは程度の差こそあれ多くのプレイヤーが予想していたことだと思います。こういったタイプのキャラクターにそういった裏側があるのは、百合ものに限らず王道といってもいいでしょう。

ですが、この作品ではもう一歩踏み込んでいます。譲葉の振る舞いの根底には、幼馴染であるネリネへの恋心があったことが描かれました。ネリネを守るためにはどんな仮面でも被るという覚悟を持ち、しかし一方で本来の自分というものがない。心がない空っぽの存在のようでいて、でもそう悩むこと自体が繊細な心を持っている証にも思える。そんな複雑で矛盾した内面が魅力的に描かれました。

強いようでいて、同時に弱くて繊細。そういった矛盾した側面はストーリーにも反映されていました。ネリネをずっと強く想っていたにも関わらず、他の娘と交際する展開があります。しかも、共通ルートで。

「春篇」も三角関係は描かれましたが、あちらは蘇芳が自分自身でも気持ちを自覚しきっていない段階でのストーリーでした。立花の行動にも問題があり、蘇芳にそこまでの非があるとも言い切れません。

しかし譲葉の場合、ほぼ逃避のような形で他の娘と交際します。ネリネへの気持ちを断ち切っているかといえばそうではなく、非常にあいまいな心理状態。このあたりはプレイ中にはすっきりしない感じでしたが、後のシナリオ上では譲葉の成長のきっかけの1つとしてきちんと活かされました。

個々の言動を外から見るとバラバラで不安定な印象が強い、「秋篇」の譲葉。ですが彼女の内面からストーリーが描写されたことで、意外にも共感できる部分も少なからず感じられました。譲葉にとってはネリネへの想いが第一にあるものの、そのために目先の小事で迷うこともある。そんな迷える主人公としてとても愛らしく思えました。

複雑なストーリーではありましたが、一つの幼馴染ものとして見ると、「秋篇」は一本筋の通った魅力的な作品であったと思います。

苺&林檎


以前から個々のエピソードでは印象的な役割を演じてきた沙沙貴苺・林檎。「秋篇」ではついにメインキャラクターに抜擢されました。

この沙沙貴姉妹も、譲葉同様にメインへの昇格に期待と不安があったというのが正気な感想です。行動をプレイヤーに読ませない描かれ方をされてきたという印象が強く、特に苺は公式でも「トラブルメーカー」「トリックスター」と紹介されていました。やはり主人公格には向かないタイプという印象は強かったです。

そしていざプレイした「秋篇」。意外な行動を取るという点では以前と同様ながらも、プレイヤーにきちんとその意図が理解できる掘り下げ方がされていました。導入部で林檎が譲葉に急接近するという展開がすでに驚きです。ストーリーが進むにつれ、林檎がそのような行動に至った理由や、苺への秘めて来た思いが描かれていきました。

譲葉視点を中心に物語が構成されているため、分量としては苺・林檎側の描写は少なめです。あくま譲葉を表としたうえでの裏の主人公たちという感じでしょうか。構成上そのあたりは仕方ないのでしょうし、私としては沙沙貴姉妹なりの内面が見れて楽しめるシナリオでした。待望の姉妹エンドがあるのも(ファンサービスのように感じられる側面もあるものの)好印象でした。

PS Vita版


今回も、携帯機に移植が行われました。ただし今回からPSP版は出なくなり、PS Vita版のみとなっています。PSPは当時すでに古いハードだったので仕方ないですね。「夏篇」まで移植してくれただけでもありがたいくらいです。

今回もプロトタイプさんによる移植ということで、移植度は完璧です。携帯機ならではの機能もあり、快適に楽しむことができました。

録りおろしドラマCDが2枚付くという点も話題になりました。こちらのドラマCDはまた機会があったら感想を書きたいと思います。

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ちなみに私はこのためにPS Vita本体を購入したので個人的にも思い出深いです。FOWERSのイメージに合わせて本体カラーは白にしてみました。

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FLOWERS −Le volume sur automne− (秋篇)【ダウンロード版(DMM】
FLOWERS −Le volume sur automne− (秋篇)【ダウンロード版(DMM】

冬篇


譲葉はニカイアの会の会長という立場上、アングレカム学院に関する秘密を少なからず知っているはずでした。これまでに起きた事件の真相が「秋篇」で明かされることを期待したプレイヤーは多かったと思われます。

ですが「秋篇」はあくまで譲葉個人としての物語として描かれており、彼女がその折々で直面する問題に絞ってストーリーは展開しました。蘇芳が「春篇」以来追ってきた謎に対する答えは、蘇芳自身が主人公となる次作「冬篇」へと持ち越されることとなりました。



そして2017年9月、ついに「冬篇」が発売されました。事前に多くの情報を明かさないプロモーション戦略が採られており、プレイヤーは様々な想像をもって作品をプレイすることとなりました。

「冬篇」の感想については、比較的最近に個別の記事に詳しく書いています。

【参考記事】
「FLOWERS冬篇」の感想

以下では、上記の記事で書ききれなかった部分について少し感想を述べてみたいと思います。

「冬篇」は主人公が「春篇」以来の蘇芳に戻ったことで、完結編にして原点回帰といった印象を受けました。学院生活自体にはさすがにもう慣れているはずですが、ニカイアの会の会長となったことでまたしても新たな体験を積む毎日。個々の学校行事で四苦八苦する姿も、ちょっと懐かしい気持ちになりました。

そんな学生らしい生活の一方で、マユリの行方を追い、学院の秘密に迫るストーリーが展開されました。これまでのシリーズでも特に濃密なシナリオになっていたのではないかと思います。

学院生活においても、謎解きにおいても、一貫して蘇芳を支えていたのが立花です。シリーズ通してのメインヒロインがマユリという事実はもはや動かないとは思いますが、蘇芳のそばに一番長くいたのは立花です。(もしマユリと結ばれなかったらという前提付きとはいえ)立花との個別エンドもあり、「春篇」からの積み重ねを強く感じました。

余談ながら、立花に関しては声と演技に関しても作品を重ねるごとに魅力的になっていったのが楽しみでした。キャラクターと演技が活き活きとリンクしていたキャラクターだったと思います。


まだまだ書ききれないほどの感想がありますが、とりあえずはこのあたりまで。「冬篇」のPS Vita版、ファンブック、ドラマCD、そして画集やアート展まで、「FLOWERS」シリーズはまだまだ新しい展開が用意されているようです。折に触れて、またいろいろ紹介できたらと思っています。

  


posted by trinder at 14:37 | Comment(0) | ゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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