以前序盤のみ紹介したことがあったのですが、それからだいぶ間が開きました。今回の記事では、内容を簡単に振り返りながら、いっきに終盤まで紹介していきます。
現在、対応言語は英語(オリジナル)と中国語のみ。ビジュアルノベルとしては英語がかなり難しめな作品かと思います。英語がわからなくて途中で挫折したという方も、参考にしていただければ幸いです。エンディングの分岐条件なども紹介します。
フルボイス化&実績搭載
もともとテキストのみでしたが、発売から1年ちょっと経った2020年夏のアップデートでフルボイス化されました(英語)。もともと美麗なイラストと幻想的なBGMが印象的な作品でしたが、声が加わって雰囲気がさらにアップしています。
キャストはどのキャラもイメージ通りのハマり役です。ある意味もっとも顕著なのは、タラ。外見上は美女ですがtransという設定です。ボイスは実際にtransの役者さんが当てたそうで、強い存在感を放っています。日本では賛否ありそうなキャラクター像ですが、LGBTQ+への理解が進んでいる欧米ではyuriの一つの形として比較的すんなり受け入れられているようです。

また、声がついたことはストーリーの理解しやすさにも一役買っているように思います。どのような感情を込めた台詞なのか、どこからどこまでが1つの意味的まとまりなのか。そういった点が声があることによってわかりやすくなっています。
純粋にリスニングの練習にもなるので、英語の教材としての価値も高まりました。
さらに、2021年4/8日付のアップデートで実績機能が搭載されました。各章に到達したり、エンディングを見たりすると達成されていきます。
また、セールで4/13まで25%OFFになっているようです。
あらすじ
怪奇現象を専門とする動画投稿者・タラ(Tara)は、アシスタントのマディー(Maddie)とともに、アイゼンフェルド(Eysenfeld)という小さな町を訪れました。ここを選んだのは、タラのファンだという女の子・モーガン(Morgan)からの情報提供があったから。
深い森と雪が特徴のアイゼンフェルドは、たしかにどこか不思議な雰囲気。ですが怪奇現象というほどのネタには一向に巡り合いません。取材の成果もなく、タラとマディーは少し険悪な雰囲気になっていきます。その一方で、タラはモーガンと仲良くなり、一夜をともにするほどの関係に。
その間、マディーは森の中でアビゲイル(Abigail)という少女と出会います。彼女はこの森から出ることができない幽霊のような存在。アビゲイルは声を出したりマディーに触れたりはできないようですが、その無邪気で純粋な人柄はマディーを惹きつけます。
一方、モーガンの養母であり町長でもあるエブリン(Evelyn)は、なぜかマディー達を敵視していました。マディーはエブリンの策略によって、吹雪の森の中に足を踏み入れますが……?
そんな感じが、chapter2までのあらすじ。以前にブログで詳しく紹介していました(もう2年くらい前ですが…)
【参考記事】
ファンタジー百合ADV「Heart of the Woods」Chapter1の内容を英語学習者向けに紹介!
ファンタジー百合ADV「Heart of the Woods」Chapter 2 を英語学習者向けに紹介!
以下では、chapter3以降のストーリーを簡単に紹介します。
Chapter3
吹雪の森で迷い、行き倒れたマディー。衰弱したマディーを見つけたアビゲイルは、彼女を救うため、最後の手段を使います。それは、マディーを自分と同質の存在 ──死んではいないが、普通の人間からは認識できない霊体のようなもの── に変えることでした。意識を取り戻したマディーは、いかなる形であれ自分を救ってくれたアビゲイルに感謝します。
今のマディーは、以前とは違いアビゲイルと話したり話したり触れ合ったりできるようです。マディーはアビゲイルに森を案内してもらい、巨大な「森の精」や、小さな妖精たちの存在を知ります。この森にはたしかに不思議な力があるようです。

Abigail: This spirit is the guardian of the forest. It helped me save you, just like it saved me long ago.
アビゲイル「ここは森の精によって守られているの。あなたを助けるのを手伝ってくれたのよ。ずっと昔、私を救ってくれたように」
その頃、タラとモーガンはマディーの行方を捜していました。しかし、霊体となってしまったマディーにタラたちが気づくことはなく……。
chapter4
タラ達から存在を認識されなくなってしまったことを悲しむマディー。そんな彼女に、アビゲイルは自らの出自を語ります。アビゲイルは、200年前のアイゼンフェルドに住んでいた少女でした。この森には呪いがかかっており、それを鎮めるためにアイゼンフェルドの町から生贄を出すならわしになっていました。アビゲイルは200年前に生贄にされたものの、森の精によって救われて現在に至ります。そして、モーガンはアビゲイルにとっては子孫にあたるようです。
アビゲイルは、自らも過酷な運命に晒されながらも、マディーのことを本気で考えてくれているようです。マディーは、そんなアビゲイルを愛しいと感じます。そしてそれはアビゲイルも同じでした。

Abigail: May I... kiss you?
アビゲイル「キス……してもいい?」
アビゲイルと一緒なら、ずっとこの森にいてもいいと思い始めるマディー。しかしそのとき、森に異変が起こります。森に満ちていたはずの魔法の力が弱まっているのです。おそらくは、魔力の大元となっている木をエヴリンが燃やしてしまったため。このままでは、森の魔法によって存在できているアビゲイルとマディーも消えてしまいます。
アビゲイルによれば、森の精の力だけでは魔法を維持することはできず、妖精の女王の存在が必要だといいます。偶然か必然か、マディーにはその女王となる素養があるようです。妖精の女王になることは、今度こそ本当に森から出られなくなることを意味します。ですが、アビゲイルと森を救うため、マディーは女王となる決意を固めます。

I've become the fairly queen.
(私は妖精の女王になった)
Chapter5
女王となったことで、マディーは強い魔力を手に入れます。今なら自分とアビゲイルの存在を再び具現化することも可能です。さらには、離れた場所に瞬時に移動することさえも。
アビゲイルを連れて、森の外の小屋まで戻るマディー。2人はそこで、タラとモーガンに再開します。タラはマディーの変化に驚きつつも、再会を喜んでくれました。なおここでマディーは、アビゲイルのことをはっきりとガールフレンドと紹介しています。
Maddie: Tara, Morgan, I'd like you to meet Abigail. She's my girl friend.
(タラ、モーガン、紹介するわ。アビゲイルよ。私の……彼女。)

200年間森から出なかったアビゲイルにとっては、目の前のすべてが新鮮なようです。マディーとタラが現代社会のことを教える光景はちょっと微笑ましい感じ。

その後、モーガンはタラに自身の過去とエヴリンの正体を語ります。エヴリンは森に巣くう呪いそのものであり、人間の体に次々に乗り移ることで長い時を生きてきた存在だといいます。モーガンを自分の娘として育てていたのは、成長したら自分の新たな体とするため。
ただし、エヴリンは野望の障害にならない範囲では、モーガンを比較的自由にさせていたようです。モーガンは以前から女の子と恋愛をしており、小さな町であるアイゼンフェルドではちょっとした噂の人だったようです。純粋そうな顔をしてなにげにメインキャラの中で一番恋愛経験豊富かも……?

Morgan: I probably slept with her.
モーガン「私、その子と寝たかも」
エヴリンとの対決を前に、穏やかなひと時を過ごすマディー達。しかしあるとき、タラが突如姿を消してしまい……。
Chapter6
最終章。
タラはエヴリンの不思議な力によって森の中に連れ去られていました。どうやら体を乗っ取ることができれば必ずしもモーガンでなくても良かったらしく、今度はタラを標的にしようとしているようです。

マディーはアビゲイルやモーガンとともに、魔法でエヴリンに立ち向かうことになります。魔法の強さを決めるのは、人の愛のようで……。

Maddie: I love you. More than anything.
マディー「愛してる。他の誰よりも」
Abigail: I love you too. More than anything.
アビゲイル「私も愛しているわ。誰よりも」
エンディングは、それまでの選択肢によって3種類用意されています。
というわけで、「Heart of the Woods」終盤までのストーリーをいっきに紹介してみました。
ファンタジーな物語が、美しいビジュアルとともに楽しめる作品でした。百合要素も違和感なく溶け込んでいると思います。マディーとアビゲイルの恋はファンタジーとしては王道という印象ですが、ちょっと斬新なタラとモーガンのカップルも良い味を出しています。
私なりにストーリーを整理してみたつもりですが、元の文章がやや難解なので結構大変でした。小説のような美しく装飾的な文体という印象です。歯ごたえのある英文に挑戦したい方にもおすすめの作品となっています。
単語メモ
chapter3以降で、本作独自の使い方をされている英単語をいくつか挙げておきます。
spirit:霊、妖精
forest spiritで森の精。
fairy:妖精
森には3人の小さな妖精が住んでいます。
unlife:生きていないこと
アビゲイルや、chapter3以降のマディーの状態。生きてはいないものの、死とも違う概念らしい。しいて訳すなら霊体という感じでしょうか。
deer:鹿
森の動物の中でもアビゲイルと仲が良いようです。
sacrifice:いけにえ、犠牲
アビゲイルはいけにえとなる一族の出身。モーガンはその子孫のようです。
shell:殻
エヴリンがモーガンをこう呼んでいます。乗り移るための入れ物、という意味合いかと思われます。
エンディング分岐
ゲーム中、選択肢は3回しか登場しません。ただし最後に表示される選択肢がそれまでの選択によって異なるため、意外と複雑な分岐条件があります。Steam内のコミュニティにわかりやすい図がありました。
【参考リンク】
Heart of the Woods Comprehensive Choice Guide
グッドエンドを見るためには、要するに以下の通りに選択すればOK。
Chapter3で「I should let her mourn.」(泣かせてあげよう)
Chapter4で「She'll pay for this.」(償わせてやる、後で見ていろ)
Chapter6で「You're right.」(あなたの言う通り)